個人の建設業許可は、法人に引き継げます(承継認可)
結論からお伝えします。個人事業主の建設業許可は、あらかじめ「認可」を受けることで法人に引き継げます。令和2年10月1日に施行された改正建設業法(第17条の2)で新設された、事業承継の認可制度です。個人から法人への「法人化」も譲渡・譲受けとしてこの制度の対象になることが、国の手引きに明記されています。
制度ができる前は、法人成りをするなら個人の許可をいったん廃業し、法人であらためて新規申請するしかありませんでした。この方法では、廃業から新しい許可が下りるまでのあいだ無許可の期間が生じ、その間は500万円以上の工事(建築一式工事は1,500万円以上など)を請け負えません。承継認可は、この空白をなくすために作られた制度です。
承継認可は、承継日(許可を引き継ぐ日)より前に認可を受けておくしくみです。承継が済んでからさかのぼって認可を受けることはできません。「会社を作ってから考えよう」では間に合わないことがあるため、承継日から逆算した準備が欠かせません。
なお、法人を作らず個人のまま許可を取る・維持するという選択肢もあります。個人事業主の許可の取り方は一人親方・個人事業主の建設業許可のページで解説しています。
「承継認可」と「廃業して新規申請」、どちらが良い?
法人成りで許可を法人に持たせる方法は2つあります。①承継認可を使う方法と、②個人の許可を廃業して法人で新規申請する方法です。大阪府も承継認可について専用の手引き(建設業認可申請の手引き)を公表しています。主な違いは次のとおりです。
- 無許可の期間……承継認可なら生じません。廃業して新規申請する場合、大阪府の標準処理期間だけで30日(土日祝を含む)。書類の準備期間も含めると、500万円以上の工事を請け負えない期間が1〜2ヶ月単位で生じることがあります。
- 役所に納める費用……承継認可には許可手数料がかかりません。新規申請では、大阪府知事許可で9万円の手数料がかかります。
- 許可番号……承継認可なら、個人時代の許可番号を法人がそのまま引き継げます。新規申請では新しい番号になります。
- 有効期間……承継認可では、承継日から新しい5年に切り替わります(個人の許可の残り期間は引き継がれません)。新規申請では許可日から5年です。
多くの場合は承継認可が有利です。ただし、承継は個人の許可業種を「全部」引き継ぐのが原則で、一部の業種だけを選んで引き継ぐことはできません。業種を整理したい場合や、スケジュールの事情によっては、新規申請の方が向くケースもあります。無許可の期間でも請け負える「軽微な工事」の範囲は500万円ルールと軽微な工事のページをご覧ください。
手続きの順序——承継日から逆算するスケジュール
大阪府では、承継認可は事前相談のうえ、承継予定日の少なくとも1ヶ月前までに申請する必要があります。この期限を過ぎると申請を受け付けてもらえません。しかも当面のあいだ、受付は予約制(1日2件)です。法人の設立登記や税務の手続きと並行して進めるため、実務では次のような流れになります。
- 承継日の2〜3ヶ月前……法人成りの方針と承継予定日を決め、大阪府(建築振興課)へ事前相談。定款の事業目的に建設業を入れるなど、法人設立の準備と許可の準備を同時に進めます。
- 承継日の1〜2ヶ月前……法人の設立登記を済ませ、登記事項証明書などを揃えて認可申請の書類を作成。承継予定日の1ヶ月前までに認可申請します。
- 承継日まで……個人の許可はそのまま有効なので、個人として営業を続けられます。法人にはまだ許可がないため、500万円以上の工事の契約は承継日以降に行います。
- 承継日……認可の効力が生じ、許可が法人へ移ります。社会保険の切替や個人側の税務手続き(廃業の届出など)も、この前後に集中します。切替の考え方は建設業許可と社会保険で解説しています。
税理士さんは登記と税務のスケジュールで動きますが、許可のスケジュールはそこに自動ではついてきません。設立日と承継日は別の日付です。「登記が終わってから許可を考える」のではなく、最初から1本の時系列にまとめておくことが、法人成りで事業を止めないコツです。
※上記は大阪府知事許可の場合です。国土交通大臣許可や他府県の知事許可では、申請期限などの取扱いが異なります。
個人時代の経管・専技の経験は、法人でも使えます
「法人になったら、経営経験や実務経験はゼロからやり直しになるのでは」——ここを心配される方が多いのですが、個人事業主時代の経験は、法人の申請でもそのまま評価されます。承継認可でも、新規申請でも同じ扱いです。
- 経営業務の管理責任者(経管)……建設業を営む個人事業主としての経営経験が5年以上あれば、法人の常勤の役員(取締役など)として経管の要件を満たせます。証明の中心は確定申告書(控え)と工事の契約書・注文書などです。くわしくは経営業務管理責任者(経管)とはのページで解説しています。
- 営業所技術者(専任技術者)……国家資格はそのまま使えます。実務経験で証明する場合も、個人時代の経験年数を積み上げて使えます。
ただし、「経験が使える」ことと「要件を満たす」ことは別です。法人側でも、経管が常勤の役員であること、技術者が営業所に常勤していることが必要です。要件の全体像は建設業許可の5つの要件のページをご覧ください。
つまずきやすい注意点(承継認可の落とし穴)
承継認可は便利な制度ですが、「申請さえすれば引き継げる」わけではありません。審査では、承継先の法人が許可の要件を備えているかが新規申請と同じ水準で確認されます。とくに次の点にご注意ください。
- 法人側も全要件を満たす必要がある……経管・専技の常勤、財産的基礎、営業所、欠格要件、社会保険。提出書類も新規申請に近いボリュームになります。
- 一部の業種だけの承継はできない……個人が持つ許可業種の全部を引き継ぐのが原則です。引き継がない業種がある場合は、認可申請の前に一部廃業の届出を済ませておく必要があります。
- 有効期間がリセットされる……承継後の有効期間は、個人の許可の残り期間ではなく、承継日からの新しい5年に切り替わります(正確には承継日の翌日から起算して5年)。更新時期の管理を忘れずに。
- 社会保険の切替日と常勤性……法人は健康保険・厚生年金への加入が義務です。経管・専技の常勤性は健康保険などの書類で確認されるため、承継日と社会保険の切替日がずれると、常勤性の証明に支障が出るおそれがあります。
- 承継日に技術者が揃っていること……承継される業種の営業所技術者は、原則として承継日に同一の技術者が引き続き常勤している必要があります。
法人成りでは、登記・税務・社会保険・許可の4つの日付がそれぞれ別に動きます。ここがずれると、常勤性の証明や決算の区切りで後々困ることになりかねません。最初にカレンダーを1枚にまとめることをおすすめします。承継のあとに役員や所在地の変更が生じたときの手続きは建設業許可の変更届一覧をご覧ください。
当事務所では、承継認可と新規申請のどちらが合うかの見極めから無料で承っています。費用の全体像は建設業許可の費用のページをご覧ください。
よくあるご質問(法人成りと建設業許可)
Q承継認可を使うと許可番号や有効期限はどうなりますか?
Q個人の許可を廃業して法人で新規に取り直すのと、承継とどちらが良いですか?
Q個人事業主時代の経管・専技の経験は法人でもそのまま使えますか?
Q認可申請はいつから準備すればいいですか?会社を作ってからでは遅いですか?
東大阪市の建設業者様は、東大阪市の建設業許可サポートのページもご覧ください。